八十八夜

5月2日は旧暦卯月2日で八十八夜です。八十八夜とは、立春から数えて八十八日目にあたる日のことで、ちょうどこの頃が一年で最も美味しいお茶が採れる時期とされています。その年の最初の新芽を摘み取ってつくられたお茶を一番茶と呼び珍重されます。不老長寿の縁起物で八十八夜に収穫されたお茶を飲むと一年間無病息災で過ごせるということです。八十八夜前後に摘み取られたお茶は、新茶の中でも最も栄養分が豊富とされています。やわらかな新芽を使った新茶は、渋味や苦味の元であるカテキンやカフェインが少なく、旨味や甘味の元であるテアニンと水分やミネラル分をたっぷりと含んでいるため、旨味と甘味と爽やかな香りが楽しめます。とはいえなかなか贅沢な品ですから、一年に一度の贅沢もよいかもしれません。
英国の紅茶ではSecond Flush of Orange Pekoe略してSFOPが高級とされています。フラッシュというのは若葉のことで一番上の花芽がflowery orange pekoe、その次の葉が(second)orange pekoe次がorange pekoeで以下pekoe souchong,souchong,kongou, Boheaと続きます。名前からすると中国語らしくペコ(白毫=白い毛)、スーチョン(小種)、コング―(工夫)、ボーヒー(武夷)となるのでレベルがわかるようになっています。実際にはペコ以下はあまり名前を聞いたことがありません。またペコと呼べるのはインド産だけだそうです。花芽は香りがよいそうですが、あまり茶にすることはなく、二番目(日本流だと一番目)がベストとされています。オレンジペコはopと略され、さらに英国風に細かく分類されておりopから最高級のSpecial Finest Tippy Golden Flowery Orange Pekoe(SFTGFOP)まで13段階に分かれています。ティーバッグにする分は混ぜるのでbroken op(bop)といい、そこでも10段階に分けられています。またファニングfanningといって細かく砕いたものが6段階、さらに細かなダストdustになっても3段階に分類されます。英国人は分類好きというか階級分けが好きなのだと感心します。無論産地でも分類され、有名なダージリン、アッサムの他にもウバ、ヌワラエリア、キーモンなどがあります。おまけに紅茶メーカーまでクイーンメアリとかプリンスオブウエールズとか固有名詞をつけた銘柄を皇室とコラボして出していますから、英国の紅茶商法もここまできたか、という印象ですね。
アメリカではかの歴史的事件であるボストン茶会事件以降、紅茶を捨てた文化が広がりましたが、アイスティーiced teaを作ったのはアメリカです。何でも氷をいれたがるアメリカ文化だということがわかります。しかしアイスコーヒーは日本の発明です。今ではアメリカでもアイスコーヒーが出る店がありますが、少し前までアメリカでアイスコーヒーをくれというとホットコーヒーに氷を入れたものを出されました。ただでさえ薄いアメリカンコーヒー(これは日本の命名です)がさらに薄まってマズイだけなので、アメリカ人も日本人は変なものを飲むと不思議がられました。缶コーヒーも日本の発明で、「ジョージア飲んだらアメリカンフィーリング」というコカ・コーラのCMを見るたびに何ともいえない感覚になりました。
英語では日本茶をgreen tea、紅茶をblack teaといいますが、これは飲む時の茶の色ではなく茶葉の色で区別しているからです。製法の違いから色が変わりますが、元の茶葉は同じものです。ウーロン茶も製法と地域が異なるだけです。最近は茶葉以外の植物のお茶も増えてきて、茶の世界も混沌としてきました。利休様も驚きでしょう。

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