コーンビーフ

1875年(明治8年)4月6日、あの台形の缶(枕缶)がアメリカで特許登録されたのにちなんで、この日がコーンビーフの記念日だそうです。例の語呂合わせではありません。コーンビーフは英語ではcorned beefで過去分詞形になっていますが、日本語ではそこが無視されています。似たようなものにアイスティーiced teaなどがあります。日本英語の典型例です。コーンといえばトウモロコシのことですが、コーンビーフのどこにもトウモロコシらしきものがないので、昔は不思議に思っていました。英語のcornはトウモロコシだけでなく、穀物一般のことを意味し、小さな粒のことなので、コーンビーフの場合、肉を塩漬けにする際の岩塩のことを意味しています。直訳するなら塩漬け肉です。日本ではコーンビーフといえばあの台形の缶に入った挽肉のことで、スライスしてマヨネーズをかけて食べる方法が一般的で、ジャガイモと一緒に炒めたり、焼いたりする他、おにぎりのネタにすることもあります。コーンビーフは元々、軍の保存食料として開発されたもので、戦後米軍の放出物資として日本に広まった他に日本の野崎産業が大々的に売り出し、今でも広く売られています。沖縄は長く米軍統治下にあったため、コーンビーフと共に豚肉の缶詰であるスパムが広まりその日本産であるワシタポークも名産になっています。こちらはspiced hamが普通名詞で、hamはもも肉のことですから、豚腿肉の香料付け、ということです。
そもそも傷みやすい肉を一番長く保存する方法をごぞんじでしょうか。それは家畜として生かしておくことです。牧畜民である欧米では常識なのですが、農耕民の日本人にはない発想です。しかし死んだ動物の肉は腐敗が早いので、塩漬けにして保存します。しかし岩塩付けにされた肉はあまりに辛いので、一旦水戻ししますが、今度は水っぽいし旨味が抜けてしまいます。そこで香料を加えて煮込むことになります。それがシチューです。欧州では昔から塩と香料が昔から不可欠だったわけです。そこで岩塩はアフリカから、香料はインドからもってくるのが貿易の基本でしたし、そこを植民地にして利益を独占しようとした国が現在の欧州の大国です。食料保存を塩漬けや油(オリーブ)から瓶詰め、缶詰へと発明がされていったのはそういう歴史があったからで、塩漬け肉の缶詰であれば半永久的な保存食として軍で重用されました。日本ではコーンビーフは筋状に挽いた肉が常識ですが、欧米のものは塊のままのものもあります。
コーンについても歴史があり、原産地はメキシコとか南米とされ、コロンブスなどのスペイン人が欧州に持ち込んだとされています。他にもトマトtomato、ポテトpotato、タバコtobaccoなどがあります。これらはすべてo-a-oという母音になっていますが、それはスペイン人が先住民の現地語がわからず適当に付けたからです。日本人ならホニャララとかいうところです。しかしトウモロコシだけはその発音形式に含まれていませんでした。それは粉にして食べたからで、そのまま粉という名称が使われたことに由来します。トウモロコシとジャガイモは比較的水の少ない荒地でも育つので、この2つが欧州にもたらされたことが欧州の飢饉を救ったのです。トウモロコシは玉蜀黍と書きます。日本には先に中国からモロコシという植物が入っていたため、唐をつけたのだそうです。モロコシはコウリャンのことで、これは高黍が示すように高麗経由で日本に入りましたが、原産地はエチオピアでインド・アフリカなど広範囲で栽培されています。玉蜀黍の漢字は玉黍(たまきび)で黄金に輝く粒の意味だそうです。

コーンビーフ