弥生と図書館開設記念日

4月1日は旧暦3月1日、つまり4月と3月もちょうど新暦と旧暦が1ヵ月遅れになります。ある意味珍しい年です。3月は弥生(やよい)です。昔は「いやおい」と呼んでいたのが短くなりました。弥はイヤと読むのが本来で今でも弥栄(いやさか)という表現として残っています。弥栄は万歳と同義なのですが、格式ばった言い方なので皇室やご尊家といった敬意をもつ対象の繁栄を祈る言葉ですから、教養として覚えておくといつか役立つと思います。弥はこのように「ますます」という意味で、生は草木の芽が出ることですから、芽が次々にでてくるという意味が弥生にあります。弥生は女性の名前につけられることが多いのですが、3月生まれという他に成長や多産を祈願して命名されるということもあります。

4月2日は図書館開設記念日です。図書館の日は4月30日なので誤解のないようにしてください。1872年(明治5年)、東京の湯島の昌平黌(昌平坂学問所)講堂跡に日本初の官立公共図書館で帝国図書館の前身である東京府書籍館(しょじゃくかん)が開設されました。今日では「しょせき」と読むのが普通ですが、昔の読み方では「しょじゃく」です。東京府書籍館はロンドン図書館などを参考にした初めてのヨーロッパ式図書館でした。のちに上野に移り上野図書館として親しまれることになりました。当初は大宝律令の時代からの呼び方で「ずしょかん」と読んでいたのですが「としょかん」と統一されるようになったのは大正以後のことです。漢字の読み方は今でも漢音と呉音によって読み方が違う場合もありますが、多くは統一されていきました。
たとえば関西はほとんど「かんさい」ですが、大学名の「関西学院大学」は「かんせい」と読みます。なぜかについては同大学のホームページに「「関西」を「かんせい」(当時はクヮンセイ)と読むのは、当時の学生気質が進取革新的で、東京をトウケイというように漢音読みする傾向があったので、本学の校名もそれにちなんだわけです。」とあります。
しかし漢音だとなぜ革新的なのか不明で、現在、東京をトウケイと読む例はありません。推測ですが、これは西を「さい」と読むのは呉音であり、呉音は仏教用語なので、キリスト教系大学として避けたというのが本当のところではないでしょうか。関西大学の前身である関西法律学校は関西学院の設立とほぼ同時期なので関西法律学校が進取革新的ではなかったとはいえないと思われます。

漢字の読みの変遷は日本語の変遷そのものであり、文字もだんだん変わってきています。台湾の繁体字は昔の日本が使っていたものとかなり共通しているので古い日本語がわかる人なら意味は通じます。一方で、現在の中国の簡体は日本人には読みにくいので意味がほぼわかりません。漢字は本来、意味を伝えることでできる表意文字で、大陸で発音が異なる民族間でも文章により伝達が可能であったことが重要な要素でした。また漢字があったことで日本は大陸の知識を書物によって得られたといえます。ただ漢字教育はなかなか大変で長い教育期間を要するため、一部知識人にしか共有されないという欠陥もあったため、平仮名のような表音文字が作られ庶民に普及してきた歴史があります。しかしすべて仮名表記すると同音異義語だらけで意味不明になります。漢字仮名混じり文はその解決の工夫で今日でも維持されています。書籍はその文明文化伝承のツールですから、ぜひもっと多くの書籍を活用したいものです。

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