初天神

毎月25日は天神祭です。現在は新暦1月25日を祭礼にしている天満宮が多いと思いますが、旧暦の方が昔の習慣がよくわかります。天神様は言わずと知れた菅原道真公ですが、天の神という意味ではなく、道真公の神号である天満大自在天神の略称なのです。それゆえ道真公を祭る神社は天満宮と呼ばれます。それにしてもすごい神号で平安時代の人はよほど恐れたと見えます。道真公(菅公ともいう)はいわゆる怨霊で、日本では古来、怨霊を崇める信仰があります。人の恨みをかうようなことをしてはいけないという教訓なのでしょう。天神様は神様であると同時にいくつもの仏に変身され人々を救いに現れるとされています。天神様に関する物語は実に多いので、ご興味のある方は調べてみてください。
天神様と梅の関係は有名な和歌だけではなく、梅は金剛界における天神で、天神は胎蔵界における梅であり梅を胸に抱く天神こそ、それら二つの宇宙の象徴であるという言い伝えもあります。たんなる梅の花ではなく天神様そのものでもあるのです。飛梅伝説もそれを知っていると真実味が増すかもしれません。
京都仏光寺通りに菅大臣神社がありますが、ここが菅公の屋敷跡とされ、飛梅の元の梅の木があります。あの和歌の元になった梅です。ここから太宰府まで飛んでいったのですね。
  東風吹かば匂ひ起こせよ梅の花、主なきとて春な忘れそ
東風(こち)は今でいう春一番。旧暦の今頃だと春を告げる東風が吹いてきます。梅の花も盛りになっている地域が増えてきています。梅祭りは全国的にありますが、京都では北野天満宮が有名です。しかし菅大臣神社は訪れる人は多くはないようですから、菅公を偲ぶにはこちらの方がオススメです。この和歌、「な~そ」という禁止命令セットの文法の例として受験生の古文学習では昔はよく知られていたのですが、今は古文という科目もほぼなくなり古典を学ぶ機会が減ったのは残念なことです。せめて大人になったらじっくり古典を味わう余裕がほしいものです。

梅干しの種を割ると中に仁があります。これを天神様と呼びます。菅公は梅干しが好きだったという伝説かららしいですが、仁はほのかな塩味で好む人もいます。杏子の仁が杏仁で、これを集めて粉にしたものを杏仁霜といい漢方薬です。この粉から作るのが本来の杏仁豆腐で薬膳料理でした。今流行りのアーモンドミルクも梅や杏子と同じバラ科の実の種ですから、いずれも健康によいのでしょう。

初天神という落語も有名です。元は上方落語でしたが、今では東西両方で演じられます。子煩悩の父親と生意気な息子との会話が楽しいのですが、演者により子供の性格や父親の性格の違いが表現されます。団子の蜜の二度付け禁止はもしかすると串カツの二度付け禁止につながっているかもしれません。無論本当の理由は違うと思います。場所は大阪だと大阪天満宮、東京だと湯島天神か亀戸天神ということになるのでしょうが、今は賑わい方が違っています。この時期は受験生の親子で一杯です。学業の神様ということなのですが、天神様は豊穣の神様でもあり、また鷽(うそ)替えといい、前年の厄を嘘だとして取り換えて今年の幸を願う神事もあります。

天神社は全国に数多くありますが、中には天津神(あまつかみ)を祭る神社もあり、菅公とは別なのでご注意を。天満宮あるいは菅原神社が菅公をお祭りしています。関東の谷保天満宮は関東最古の天満宮ですが、野暮(やぼ)の語源になったとされています。諸説ありますが、野暮は野夫が訛ったとか。色里で粋でない田舎者をそう呼んだとされています。神社もいい迷惑です。

天満宮